うつ病の治療法

うつ病の特殊な治療法

2020年3月22日

うつ病の治療、特殊

 

うつ病の主たる治療は薬物療法や精神療法ですが、これらの治療を行ってもほとんど効果が上がらない難治性のうつ病の場合は、症状に応じて特別な治療法が行われることがあります。

 

「難治性のうつ病とは?」

もともと、うつ病は治療にある程度の時間がかかり完治までに長い期間が必要な病気の1つです。

基本の治療では心身を休める休養と薬を服用する薬物療法の2つが中心になります。

一般的には、この薬物療法で服用する抗うつ剤は即効性のある薬でなく徐々に効いてくるのですぐに症状が軽くなるわけではありません。

薬が効き始めて症状が落ちついてきた場合も、さらにある程度の期間は薬を続けて飲んでいきます。

うつ病のつらい症状から、脱出するまでに1カ月~3カ月はかかると考えられています。

症状が回復してきても薬は継続して飲んでいきます。自己判断にて薬をやめてしまうと症状が悪化する可能性があります。

医師は様子を見ながら少しずつ精神療法などもしていきながら、内服薬を減らしていきます。

個人差はありますがさらに半年程度の期間はかかると言われています。

うつ病の原因は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症するといわれていて、1つではないのでその要因により、回復までにかかる時間にも大きな差がでます。

なかには、医師や患者さんが期待したようにうつ病の薬が効かないケースもあります。

抗うつ剤が効かずに治療が長引くケースやせっかく効果が出たと思っても、すぐにうつ状態に戻ってしまい、不安感や絶望感、興味や喜びの消失や孤独感等から死を強く意識するような場合もあります。

これを難治性のうつ病といいます。

薬が効かない難治性のうつ病の場合の特殊な治療法はどのようなものがあるか紹介していきたいと思います。

 

「通電療法」

通電療法は、頭部に電極をつけて電流を流し、その刺激によって脳の神経の働きを通常の状態に戻す治療法です。

電気の刺激によりけいれんが起こりますので、“電気けいれん療法”“電気ショック療法”“ECT(electroconvulsive therapy)”などと呼ばれています。

最近は“修正型電気けいれん療法”で、全身麻酔をかけ筋弛緩薬を注射して行い、従来の3分の1程度の電気エネルギー量を与えることにより、けいれんを誘発し、脳波や心電図、筋電図もモニターできるものが主流になっています。

こめかみに電極を貼りつけ、電流を数秒流します。治療時間はおよそ30分〜60分程度です。全身麻酔をかけるため入院する必要があり、実施には必ず本人および家族の同意が必要になります。

通電療法の特徴は、安全で抗うつ効果が高く、即効性があることです。薬が効きにくい重症のうつ病の人や、自殺リスクの高い人、躁うつ病や統合失調症の人に有効とされています。

しかし、持続性がないため、定期的に通電療法を受けるとよいといわれています。

 

「高照度光療法」

高照度光療法とは光療法とも呼ばれていて、太陽の光と同等の光を発生させ朝に体内に取り入れることにより、脳にある体内時計をリセットし生体リズムを整えることのできる治療法です。

人間の体は体内時計によって生体のリズムが調整されていて、朝太陽の光を浴びることにより、体内にある睡眠ホルモンのメラトニンの分泌をストップさせます。

メラトニンは起きてから14〜16時間後に体内時計により再び分泌されます。

うつ病が原因で昼夜逆転している場合や生活リズムがくずれている場合は、高照度光療法を何度か行うことで、体内時計を調整して生体リズムを健康な状態に整えることができ、だんだん健康な生活を送れるようになります。

この治療法は、非常に明るい人工的な光(2500ルクス以上)を毎日数時間浴びるだけの簡単な治療法です。

高照度光療法は、特に「冬季うつ病」の患者さんに有効とされています。薬が効きにくい場合は、この光治療を行います。

 

 

「経頭蓋磁気刺刺激療法」

電気けいれん療法を応用して開発された新しい治療法で、電気のかわりに磁気で脳を刺激する治療法です。

うつ病と深い関わりがあるといわれる脳の前頭前野に、磁気を帯びたコイルをあてて磁場を発生させ、その電気刺激によって治療します。

通電療法とは違い全身麻酔が不要ですので、体への負担が少ないというメリットがあります。

 

 

「断眠療法」

患者さんを眠らせないようにし、睡眠と覚醒のリズムをかえることで精神状態を改善していく治療法です。

一晩まったく眠らない“全断眠療法”や、一晩の半分だけ断眠する“部分断眠療法”などがあります。

断眠療法は、原因がはっきり特定できない内因性のうつ病に効果があるといわれています。しかし、持続性がないため、他の治療法と組み合わせて行うのが一般的です。

このように薬が効かない難治性うつ病の患者さんには、症状に応じたさまざまな治療法がありますが、どの病院でも受けられるわけではありませんので、希望される場合は主治医に相談しましょう。

 

記事監修・佐藤典宏(医師)
1968年・福岡県生まれ。
1993年・九州大学医学部卒業後、研修医を経て九州大学大学院へ入学。 学位(医学博士)を取得後、米国ジョンズホプキンス医科大学に5年間留学。現在は福岡県内の病院で、診察と研究を行っている現役医師。メディカルサプリメントアドバイザー資格

 

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